校長ブログ

ベトナムの国内留学

2026.08.12 グローバル教育

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8月12日

 近年、ベトナムの高等教育が大きく変化しています。かつて海外留学が成功の象徴であった時代から、国内で国際教育を受けるという新たな選択肢が急速に広がっています。いわゆる「国内留学」です。

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 象徴的なのが、RMIT University Vietnam の存在です。同校では授業がすべて英語で行われ、多国籍な学習環境の中で学生たちが学んでいます。オーストラリア本校と同様の教育プログラムをベトナム国内で受けられることから、多くの若者に支持されています。

 ハノイ出身のある学生は、本来はヨーロッパ留学を希望していました。しかし、コロナ禍や経済的事情、将来のキャリアを総合的に考えた結果、ベトナム国内で国際教育を受ける道を選択しました。この判断は、現在のベトナムの若者の価値観を非常によく表しています。

 彼らは単に海外に行くことを目的としていません。むしろ、「何を学ぶか」「卒業後にどのようなキャリアにつながるか」を重視しています。これは日本の高校教育や大学教育にとっても重要な示唆です。

 ベトナムでは2010年前後から外国大学との連携が制度的に認められ、多くの大学が英語による学位プログラムを導入しました。経営、データサイエンス、コンピューター科学、工学、メディアなど、産業界と直結する分野が人気を集めています。教育と産業政策が密接につながっている点は非常に興味深いところです。

 さらに注目すべきは、Vin University を中心とする国家戦略です。ベトナム政府は2045年の先進国入りを掲げ、半導体やAI、科学技術分野への投資を急速に進めています。大学もその国家戦略の中核に位置づけられています。

 印象的なのは、教育の費用対効果を学生も保護者も極めて重視している点です。欧米留学に比べ、国内の国際大学は費用を大幅に抑えながら、英語教育、国際環境、就職機会を提供しています。しかも家族やコミュニティとのつながりを維持できる。これはアジア的価値観とも深く関係しているように思います。

 一方で、海外留学希望者が減っているわけではありません。むしろベトナムの留学生数は過去最高を更新しています。つまり、国内での国際教育と海外留学が対立しているのではなく、多様な選択肢として共存しているのです。

 ここに、これからのアジア型教育モデルの可能性を感じます。日本でも「グローバル教育」という言葉は定着しました。しかし、単なる海外志向だけではなく、地域に根ざしながら世界とつながる教育をどう構築するかが問われています。英語で学ぶことは目的ではなく、世界の課題と協働するための手段です。

 ベトナムの動きは、単なる教育改革ではありません。国家の未来戦略そのものです。そして、その中心に大学と若者がいることに、大きなエネルギーを感じます。アジアの教育地図は、これから大きく塗り替わっていくのかもしれません。