校長ブログ

英語教育を考える74-公平性を問い直す英語評価のこれから

2026.09.04 英語教育

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9月4日

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教員:最近は英語のライティングやスピーキングをAIが採点するシステムが増えていますね。AIの方が公平だという意見もありますが、本当にそうなのでしょうか?

校長:よい質問だね。結論から言えば、AIだから公平、人間だから不公平という単純な話ではないんだよ。評価における公平性(fairness)は、教育評価の中でも最も重要なテーマの一つなんだ。

教員:AIは感情に左右されないので、公平な印象があります。

校長:確かにAIは疲れたり、気分で採点したりすることはないね。同じ答案に対して同じ判断を返すという一貫性は非常に高い。これは人間より優れている点だよ。一方で、AIは学習したデータの影響を受ける。もし学習データに偏りがあれば、その偏りをそのまま反映してしまう可能性があるんだ。

教員:つまり、人間のバイアスがAIにも引き継がれることがあるということですね。

校長:その通りだね。これをアルゴリズム・バイアスと呼ぶことがある。例えば、特定の英語表現ばかりを高く評価する学習データで訓練されれば、多様な表現を適切に評価できなくなる可能性があるんだよ。

教員:人間の採点には、どのような課題がありますか?

校長:人間には評価者効果(rater effect)があるね。同じ答案でも、厳しく採点する先生もいれば、比較的寛容な先生もいる。また、採点する順番や疲労、先に読んだ答案の出来によって判断が変わることも研究で示されているんだ。

教員:そうした違いは分析できるのでしょうか?

校長:もちろんだよ。英語教育研究では多面的Raschモデル(Many-Facet Rasch Measurement)という分析方法が広く使われている。受験者の能力だけでなく、課題の難易度や評価者の厳しさまで数値化できるんだ。だから、誰が採点したから点数が高くなったという影響を統計的に検証できるんだよ。

教員:AIもその分析対象になるのでしょうか?

校長:なるね。最近ではAIを一人の評価者として位置付け、人間採点者との一致率や、どのような答案で評価が分かれるのかを分析する研究が増えている。AIと人間の両方の特性を比較することで、それぞれの強みと弱みが見えてくるんだ。

教員:一致率が高ければ、それで十分なのでしょうか?

校長:そこが大切なポイントだね。一致率だけでは評価の妥当性は説明できないんだ。同じ点数でも、その理由が適切であるとは限らない。だから最近の英語テスト研究では、論証型妥当性という考え方が重視されている。なぜその評価になったのか、その結果を教育的にどう活用するのかまで含めて説明できることが求められているんだよ。

教員:AIが採点理由を示せるようになれば、教育にも役立ちそうですね。

校長:その通りだね。AIは単に点数を付けるだけではなく、語彙の多様性や文法の特徴、論理構成などを可視化することも得意なんだ。教師はその情報を参考にしながら、学習者一人ひとりに応じたフィードバックを行うことができる。これは教師の専門性を高める支援にもなるよ。

教員:すると、AIが教師に代わるというより、教師を支える存在になるということですね。

校長:私はそのように考えているよ。教育評価は点数を付けることが目的ではない。評価を通して学習者の成長を支えることが本来の役割なんだ。AIは大量のデータを迅速かつ一貫して処理できる。一方で、学習者の背景や努力、挑戦の過程を理解し、励ましや次の学びへつなげるのは教師だからこそできる仕事なんだよ。

教員:AIと教師が互いの強みを生かすことで、より公平で教育的な評価が実現できるということですね。

校長:その通りだね。これから求められるのは、AIか人間かという二者択一ではない。AIの分析力と教師の教育的判断を組み合わせながら、公平性・妥当性・学習支援を同時に実現する評価を設計していくことなんだ。それがこれからの英語教育に求められるカリキュラム・マネジメントの一つの姿だと考えているよ。