校長ブログ
数学は何の役に立つのですか?
2026.09.22
教科研究
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9月22日
学校現場で長年、生徒たちと向き合っていると、「数学は何の役に立つのですか?」という問いを何度も受けてきました。しかし近年、その答えは大きく変わりつつあります。今、最先端のAI研究で注目されている「圏論」は、その象徴的な存在です。

圏論は、物事の「関係性」に着目した数学の最先端の研究分野。「対象」と「射(矢印)」の組み合わせで表現され、個々のものそのものではなく、それらがどのようにつながり、どのような構造を形成しているのかを抽象的に捉えます。そのため、「数学の数学」とも呼ばれています。
京都大学の丸山善宏准教授は、この圏論をAIに応用した新しい学習モデルを提案しました。従来のAIは、猫の向きや姿勢が変わると認識精度が落ちることがありました。しかし、圏論の考え方を取り入れることで、「猫らしさ」を構造として理解し、見え方が変わっても本質を捉えられる可能性が広がっています。これは単なる技術革新ではなく、「関係性を理解するAI」への大きな一歩だと言えるでしょう。
この発想は教育にも極めて重要だと考えます。学校では知識を積み重ねることが重視されがちですが、本当に大切なのは知識同士を結び付け、新しい意味を生み出す力です。歴史と文学、数学と音楽、理科と社会。それぞれを独立した教科として学ぶだけではなく、それらを横断して考えることで、本質的な学びが生まれます。いわゆる教科横断です。
また、人間関係にも圏論的な視点は役立ちます。議論がかみ合わないとき、多くの場合、互いが異なるレイヤーで話しています。事実を議論したい人と、気持ちを共有したい人では、会話がすれ違うのは当然です。相手との関係性を意識することで、コミュニケーションは驚くほど円滑になります。
AIが進化する時代だからこそ、人間に求められる力も変わります。知識をたくさん覚えることよりも、異なる知識を結び付ける力、異なる立場の人を理解する力、そして複雑な社会を構造的に捉える力が重要になります。
教育の目的は、答えを早く出せる人を育てることではありません。物事の本質を見抜き、多様な関係性の中から新しい価値を創造できる人を育てることです。圏論は難解な現代数学ですが、その根底に流れる思想は実にシンプルです。「ものを見る」のではなく、「つながりを見る」。これからの教育も、そしてAIとの共生社会も、この視点を持つことが未来を切り拓く鍵になるのではないでしょうか?