校長ブログ

科研費研究より再認識したこと

2026.09.30 EdTech教育

この記事は音声でも、お聴きいただけます。

9月30日

 関西国際大学の4名の教授陣と進めている科研費(科学研究費助成事業)の研究について、日本教育情報学会(JSEI)第42回全国大会において、陳先生が「留学生教育における学修接続のミスマッチと支援課題--送り出し機関と受入大学における継続調査に基づく生成AI・MALL活用の検討」というテーマで発表されました。

ChatGPT 画像 2026年9月29日 11_50_37.png

 今回の研究で改めて考えさせられたのは、一人ひとりの違いを知ることから教育は始まるということ。留学生教育では、日本語予備教育機関で学んできたことと、大学で求められる学修との間に、さまざまな「学修接続のミスマッチ」が生じています。

 3機関79名を対象としたアンケート調査では、漢字圏・非漢字圏による日本語力の違いだけでなく、「読む・聞く」といった受容系の技能と、「話す・書く」といった産出系の技能との間にも、個人差があることが見えてきました。つまり、「日本語ができる」「できない」という単純な捉え方では、一人ひとりの学びの実態を十分に理解することはできません。

 大切なのは、「何ができているのか」「どこでつまずいているのか」「これまで、どのように学んできたのか」です。こうした学習履歴を丁寧に把握し、その生徒・学生に必要な個別最適化した学びを考えていくことです。これは、留学生教育だけの課題ではありません。

 本校でも、生徒たちはそれぞれ異なる学習経験を持ち、得意なことも、苦手なことも違います。同じ学年、同じ教室で学んでいても、学び方は決して一様ではありません。だからこそ、本校が目指す教育においても、全員に同じ支援をすることだけを大切にするのではなく、一人ひとりの現在地を見取り、その違いを学びの出発点にすることを大切にしていきたいと考えています。

 今回の研究では、課題を「技能」「制度」「支援」の三つの層から捉えています。これは学校教育について考える上でも重要な視点です。教科の知識や技能だけではなく、これまでどのように学んできたのか、どのような環境で学ぶのか、そして、どのような支援があればさらに伸びていけるのか。生徒の成長を、こうした複数の視点から捉えていく必要があります。

 また、生成AIやMALL(モバイルを活用した語学学習)など、新しいテクノロジーの活用も進んでいます。AIやICTは、教員に代わるものではありません。一人ひとりの学習状況を把握し、必要な練習やフィードバックを提供するための「もう一つの学びの環境」として、人による教育と組み合わせていくことが重要です。本校では、こうした研究から得られる知見も学校現場に取り入れながら、生徒一人ひとりの可能性を丁寧に見つめていきます。「できないこと」を指摘するだけではなく、「できること」を見つけ、そこから次の学びにつなげる。その積み重ねが、生徒自身が自分の成長を実感し、次の一歩を踏み出す力になると考えています。多様な生徒が集う学校だからこそ、違いを「課題」として捉えるのではなく、一人ひとりの違いを学びの力に変えていく。これからも、本校らしい教育実践を積み重ねていきたいと思います。