KYG教育研究所(校長ブログ)
―教育を学校の中だけで考えない―
ジャンルレスな交遊から始まる探究
2026.11.05
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11月5日
スコットランドの首都エディンバラを訪ねると、アダム・スミスの知の営みが、一人で机に向かうだけのものではなかったことに気づかされます。
晩年の12年間を過ごしたパンミュア・ハウスでは、『道徳感情論』や『国富論』の改訂に励む一方、化学者ジョゼフ・ブラックや地質学者ジェームズ・ハットンら、専門の異なる知識人と交流を重ねました。金曜の夜には議論を交わし、日曜には友人を招いて食卓を囲む。異なる知が出会い、対話によって新たな考えが生まれる環境です。
さらに興味深いのが、スミスの蔵書です。文学、科学、歴史、哲学、旅行記など、約3000タイトルに及ぶ幅広い読書からは、知識を一つの領域に閉じ込めず、異なる分野を行き来しながら思考を深めていた姿が浮かびます。
ここに、探究学習を考える上で大切な視点があります。探究とは、最初から「正しい答え」を探す学習ではありません。自分の疑問を出発点に、異なる教科の知識に触れ、異なる価値観を持つ人と対話し、ときには自分の考えを問い直す。その過程そのものに価値があります。
例えば、環境問題を考えるとき、理科だけで完結することはありません。科学的なデータを読み、数学で分析し、社会や歴史から背景を捉え、英語を使って海外の同世代と意見を交わす。そうした学びが結び付いたとき、教科で得た知識は「自分の問いを解くための道具」へと変わります。
スミスが異分野の知を結び付け、自らの思想を磨いていったように、生徒にも「ジャンルレスに学ぶ」経験を届けたいと思います。そして何より大切なのは、人との出会いです。自分とは異なる考えに触れることで、問いは深まり、視野は広がります。探究を個人の活動で終わらせず、仲間や地域、海外の人々との対話へと開いていく。
学校とは、知識を蓄える場所であると同時に、知と知、人と人をつなぐ場所です。その交わりの中から、生徒一人ひとりの「もっと知りたい」「自分ならどうする」という問いが生まれます。私は、その小さな問いを育てることこそ、これからの探究学習の大切な役割だと考えます。