校長ブログ
学力を正しく捉えるために
2026.02.02
カリキュラム・マネジメント
2月2日
全国学力調査の結果に関して、「得点が下がった」という見出しだけが独り歩きする状況を目にします。しかし、教育は短絡的に判断できるものではありません。得点は項目反応理論(校長ブログ2025.9.2)という専門的な手法で算出されており、その意味や前提を理解しなければ、議論はどうしても表面的になってしまいます。
加えて、OECDの教育統計を見ると、日本はICT分野で学ぶ学生割合のデータが欠測で、国際比較そのものができません。学校基本調査に項目がないためですが、ICT人材育成が国家的課題となっている今、この状況は看過できないものです。まず確認すべきは、この測り方そのものとあらためて感じます。
また、日本では「学力」という言葉が非常に広く使われています。テストで測定できる力と、測りにくい力が混在し、それが議論を複雑にしています。今回話題の中心となっているのは、あくまで測定可能な学力です。ここを整理しないまま原因や対策を語れば、結論だけが一人歩きし、現場には誤ったメッセージが届きかねません。
さらに重要な論点は、全国学力調査が一時点のデータしか提供していないことです。この形式では、どの要因が得点に影響しているのかを科学的に判断することはできません。本来必要なのは、同じ子どもを継続して追跡するパネル調査。学習時間の変化や指導方法の違いが、どのように子どもの学びの伸びにつながっているのか。こうした関係性を確かめるためには、縦断データが欠かせません。
海外では学力調査をパネル型で実施する国は珍しくなく、米国や英国はもちろん、韓国や中国も縦断データを整えています。これらの国々が教育政策の検証力を高めている背景には、こうしたデータ基盤の存在があります。
本校では、この課題意識を踏まえ、個別最適化学習を軸に、一人ひとりの成長を丁寧に見取る環境づくりを進めています。理解のつまずきや興味の変化をデータから捉え、必要な支援を適切なタイミングで提供する。こうした実践は、継続的な学びの記録があって初めて精度を増します。つまり、個別最適化の着想とパネル調査の着想は、本質的に同じ方向を向いているのです。
もちろん、継続調査の設計・実施には負担も伴いますし、個人情報保護の観点から協力を得にくい場面もあります。それでも、十分なデータがないまま政策だけが語られれば、現場はそのたびに振り回されることになります。だからこそ、「どのデータが必要なのか」「なぜ必要なのか」を社会全体で共有し、理解を深めることが欠かせません。
子どもたちの成長を本気で支えるために、私たちは"見えている学力"だけでなく、"まだ見えていない学力"に目を向け続けたいと思います。そのための基盤づくりを、これからも学校として誠実に進めて参ります。